第7回心電図検定まであと313日!
一日、一心電図
今日もしつこく胸痛疾患です。
復習もいいもんですよ!
今日の心電図
59歳男性。
急性発症の胸痛にて救急搬送。
一回だが、搬送中に意識消失もあり。
主訴は「胸痛」ですので、
「かたち」を意識して
12誘導心電図を施行しました。
では、心電図診断は?
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心電図診断は、
「急性下壁心筋梗塞」
「近位部閉塞」
「右室梗塞合併」
「心室固有調律」
です。
SETで戦え!
急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome:ACS)を
疑ったら、
「SETで戦え!」
でしたね!
まずは、症状(S)
本症例は意識消失後で、
さらに徐脈が続いているためか、
まだ朦朧とされていたため、
詳細な聴取はできませんでした。
本症例では、skipしました。
つぎは心電図(E)
「胸痛」が主訴ですので、「かたち」の異常であるST変化を探します。
そういう意識で判読すると、
・ST上昇@ⅢaVFⅡ/V1
・ST低下@V2-4/aVLⅠV5-6
を見つけることができます。
ST上昇の範囲は、主に
下壁(ⅢaVFⅡ)領域
に認めます。
ST上昇に対する鏡面像(mirror image/reciprocal change)は
前壁中隔(V2-4)領域
そして
側壁(aVLⅠV5-6)領域
に認めます。
下壁梗塞の心電図判読で重要なことは、
1. 早期再灌流のため、カテ室搬入を素早く決定すること
(ST上昇型心筋梗塞であると診断を下すこと)
2. 予後不良である右室梗塞を鑑別すること
3. リズム異常(房室ブロック、洞不全)を鑑別すること
でしたね。
1に関して
・aVLⅠV5-6
・V2-4
で鏡面像を認めます。
心筋梗塞の可能性はさらに高まりました!
カテ室へレッツゴーです!
2に関して
右室梗塞合併例は予後不良です。
この右室梗塞を早期に認知するためにも、
心電図で右側胸部誘導を必ず記録しましょう。
V3R-V5Rで1mm以上のST上昇を認めれば、
右室梗塞を合併しております。
V3R-V6RではっきりとしたST上昇を認めます。
よって
右室梗塞合併
ですね汗
即座に、
・硝酸剤使用は避ける
・輸液負荷を早める
・PCPS(VA-ECMO)スタンバイ
を行います。
3に関して
P波を認めず、心室固有調律となっています。
徐脈性不整脈を合併しておりますので、
硫酸アトロピン静注
や
経皮的ペーシング装着
を行いながら、カテ室搬入です。
カテ室で
経静脈的ペーシング留置
を行い、心拍は安定化しました。
カテ室では…
冠動脈カテーテル検査で、
右冠動脈近位部(#1、右室枝より手前)が完全閉塞してました。
ステント留置し再開通(TIMIⅢ)に成功しております。
無事救命できました。
再灌流と補液のみでバイタルも安定し、
右室梗塞も大事には至りませんでした。
左:治療前、右:治療後
右側胸部誘導の記録は大変?
毎回強調しておりますが、
急性下壁心筋梗塞において、
右室梗塞を鑑別することは非常に重要です。
右側胸部誘導(V3R-5R)を記録することで、
右室梗塞の有無を調べることができます。
ただし、電極の貼り直しをしないといけないため、
ただでさえ急いでいる救急の現場では、
少し面倒とさえ感じます。
12誘導のみで判断することはできないのでしょうか?
V1誘導の有用性
右室を眺めている誘導を確認してみましょう。
V3R-5Rは当然ですが、V1誘導も右室を近くから眺めています。
したがって、右室梗塞を合併していれば、
V1誘導でST上昇をきたすことになります。
「そうか、であれば、右側胸部誘導を記録する必要はないな」
となりそうですが、そうは問屋が卸さないのです。
下壁梗塞時の鏡面像を確認してみます。
実は、下壁梗塞時の鏡面像は、
対側に位置するV1-V4誘導やaVLⅠV5-6誘導
で確認できます。
とすると、下壁梗塞時に、
V1ではST低下
を呈することになります。
下壁梗塞に右室梗塞を合併した場合には、
V1誘導では、
右室梗塞によるST上昇
と
下壁梗塞によるST低下
の合成されたST波形になるということです。
さらに大きな右冠動脈で後壁梗塞まで伴った場合には、
どうなるのでしょうか?
後壁誘導V7-9の対側に当たるV1-3誘導では
鏡面像としてST低下が出現します。
もし、
後壁領域まで還流する大きな右冠動脈が
近位部(右室枝より手前)で閉塞をきたした場合には、
V1誘導では、
右室梗塞によるST上昇
と
下壁梗塞によるST低下(鏡面像)
と
後壁梗塞によるST低下(鏡面像)
とが合成されたST波形になるということです。
もうまじでこんがらがってきました・・・
V1誘導のSTは、様々なST変化の総和
とにかくわかったことは、
V1誘導のST部分は、
様々なST変化の総和
である
ということです。
そのため、
V1誘導のみで右室梗塞の有無を評価するのは難しい
ということになります。
したがって、やはり右室梗塞を直接反映する
右側胸部誘導(V3R-5R)を記録すること
が重要と言えます。
ただし、
「私はV1誘導を愛してやまない!」
という画面の前の貴方に
ちょっとだけ朗報です。
下壁梗塞において
右室梗塞を合併したときのみ、
V1誘導はST上昇の要素が加わります。
したがって、
本来「下壁梗塞の鏡面像でST低下しているV1誘導」が、
ST低下していない
場合には、
右室梗塞が合併している可能性が高まると考えてもよい
と思います。
ただし、繰り返しになりますが、
右側胸部誘導を記録して確認することは必須ですよ!
Take Home Message
・下壁梗塞を疑ったら、
鏡面像
右側胸部誘導
リズム異常
の3点と確認し、対処する
・V1誘導でSTが下がっていなければ、右室梗塞合併も考慮する
※あくまでも参考程度
では、またあした!
参考にしました
↓↓↓
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第88問~96問までが「虚血性心疾患」のパートになっています。
第91問、94問、95問は類似症例になっています。
確認してみてください。
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