心電図検定3級レベル

〜practice 002〜

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症例

70歳 女性
急性発症の胸痛を主訴に救急外来を受診。冷汗、嘔気を認める。

主訴は「胸痛」ですので、「かたち」を意識して、12誘導心電図を施行しました。

では、心電図診断は?










心電図診断は、「急性下壁心筋梗塞」です。

 

 

「かたち」の一つであるST部分に注目!
「胸痛」が主訴ですので、「かたち」の異常であるST変化を探します。

 

 

そういう意識で判読すると、
・ST上昇@ⅢaVFⅡ
・ST低下@V2-4/aVLⅠV5-6
を見つけることができます。

 

 

ST上昇と鏡面像

ST上昇の範囲は、下壁(ⅢaVFⅡ)領域に認めます。
ST上昇に対する鏡面像(mirror image/reciprocal change)は前壁中隔(V2-4)領域、そして側壁(aVLⅠV5-6)領域に認めます。

 

 

 

 

心筋梗塞の心電図を判読する上で、鏡面像であるST低下は非常に重要です。
特に下壁梗塞においては、梗塞領域を反映する下壁誘導ⅢaVFⅡよりも早期に、対側(鏡面)に存在する側壁誘導aVLⅠV5-6(特にaVL)で先行してST低下が現れます。

 

early ischemic sign

 

実臨床では、完全にST上昇をきたす前段階で患者さんが心電図検査を受ける状況もありますので、こういったST上昇の前に起こる心電図所見(early ischemic signと勝手に私は呼んでいます。)を知っておくと、見逃しなく診断し、かつ迅速に治療へ移行できます。

 

 

実際、こういったearly ischemic signを見つけ、患者さんの役に立った時は非常に充実感あふれるとともに、たった一つの心電図がここまで臨床での結果を変えると思うと身震いさえ感じます。

 

 

カテーテル検査では…

さて、冠動脈カテーテル検査で、右冠動脈遠位部(#3)が完全閉塞しており、ステント留置し再開通(TIMI Ⅲ)に成功しております。無事救命できました。

 

 

この心電図は実臨床ではよく出会う心電図で、当然見逃してはいけませんし、1秒でも早く診断をつけなくてはいけません。

 

 

繰り返しになりますが、急性心筋梗塞は刻一刻と心筋が壊死していっている恐ろしい疾患です。”Time is muscle(時は心筋なり)”を合言葉に、迅速な診断で患者さんの命と心臓を救いましょう!

 

 

ST上昇型急性心筋梗塞の診断は、
・症状
・心電図
で行います!もう大丈夫ですね!!

 

心電図検定では…

心電図検定公式問題集(第3版)では、
第88問~96問までが「虚血性心疾患」のパートになっています。
第91問、94問、95問は類似症例になっています。
確認してみてください。

 

当blogのpractice001も類似問題です。

心電図検定 3級レベル〜practice 001〜

 

まとめ

・前壁中隔領域:V1-4
・側壁領域:aVLⅠV5-6
・下壁領域:ⅢaVFⅡ
・ST上昇だけでなく、鏡面像であるST低下も確認する
・下壁梗塞では、ⅢaVFⅡでのST上昇より先に側壁領域(特にaVL)でのST低下が出現する(early ischemic sign)
・やっぱりTime is muscle!

 

 

 

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