第7回心電図検定まであと308日!
一日、一心電図
Practice makes perfect!
今日の心電図
では、今日の心電図です。
60歳代、男性。急性発症の胸痛。
搬入時は胸痛も持続しておりましたが、
心電図記録時には症状は軽快しておりました。
「もう良くなった。帰っていいかい?」
と本人は言っております。
その際に記録した心電図となります。
帰宅させていいでしょうか?
心電図診断をお願いします。
アクションも思い浮かべてください。
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心電図診断は
「Wellens’ syndrome」
です。
解説
★王道の判読★
基本調律:正常洞調律、心拍数60bpm前後
P波:心房負荷所見なし
PR間隔:延長・短縮なし
軸:正軸
移行帯:V2-3
低電位:四肢誘導低電位あり
高電位:左室高電位なし、右室高電位なし
ST部:ST変化なし
T波:二相性T波@V2-3、陰性T波@V1/V4
QT間隔:延長・短縮なし
所見として、T波の変化を認めております。
それほど目立った所見ではないかもしれませんが、
今回は、
胸痛発作後
の所見ということで、
見逃してはいけないものとなります。
Wellens’s syndrome
救急の現場で
「胸痛」があって、心電図変化があれば、
注意深くならない医療者はいないと思います。
ではもし、診察時に症状が落ち着いていたらいかがでしょうか?
「とりあえずは大丈夫じゃない?」
「後日、かかりつけ医に行けばいいんじゃない?」
と、それほど急がなくても…という気持ちに
なってしまいうのではないでしょうか?
しかし、今回の心電図所見を呈する症例では、
決して油断してはならないのです。
この心電図所見を
Wellens’ syndrome
といいます。
この心電図所見を呈する症例では、
見逃されると、
「その75%が1週間以内に心筋梗塞に移行する」
と報告されています。
(Am Heart J. 1982 Apr;103(4 Pt 2):730-6.)
非常にヤバい所見ですよね。
Wellens’ 症候群の心電図変化
以下のように心電図所見としては、
2パターンあります。
Wellens’ syndromeの心電図所見を呈する症例では、
冠動脈造影検査を行ってみると、
左前下行枝の‘近位部’で‘高度狭窄’
を認めております。
この病変を責任病変とする急性冠症候群であったというわけです。
Wellens’ syndromeは
「直近に胸痛の病歴」
&
「今は無症状もしくは症状軽快」
&
「V2-3誘導におけるT波異常」
を臨床上認める急性冠症候群とまとめることができます。
ちなみに、別名として
“LAD-T wave inversion pattern”
とか
”post-ischemic T wave inversion”
と言われております。
もう一度いいます!
繰り返しになりますが、
重要なのでWellens’ syndromeのポイントをもう一度強調しておきます。
”post-ischemic T wave inversion”という名の通り、
心電図記録時に症状がないことも多く、
症状軽快していても、
Wellens’ syndromeの心電図所見を認めれば、
重症かつ緊急であるという意識を持ち、
迅速に介入することを忘れてはなりません!
本症例も
心電図記録時には、
胸部症状が消失しておりましたが、
と、V2-3で二相性T波を認めており、
Wellens’ syndrome
と診断しました。
緊急冠動脈造影検査を施行しました。
左:治療前 右:治療後
左の造影所見から、
左前下行枝近位部
を責任病変と判断し、引き続いてPCIを施行し
右の造影所見のように
血行再建術に成功しております。
帰宅させなくてよかったー
Take Home Message
・Wellens’ syndromeの心電図所見を知っておこう
・V2-3のT波異常(陰性T波もしくは二相性T波)
・胸痛軽快でも、帰宅させてはダメ
本症例は、下記と同一症例です。
参考にしました
↓↓↓
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